野生動物かペットに関わらず動物であれば何らかの形で細菌やウイルスを持っているものです。それらがヒトの体内に入り込むことで感染症に感染します。このように動物からヒトにうつる感染症のことを「動物由来感染症」と呼びます。この記事では動物由来感染症の種類や症状について紹介します。
特にこんな方には必見です!
・ペット飼育初心者の方
・野生動物が自宅に侵入・住み着いてしまった方
動物由来感染症とは
「動物由来感染症」とは、動物から人に感染する病気の総称です。人も動物も発症するもの、動物は無症状で人だけが発症するもの等、病原体によって様々なものがあります。
近年ではグローバル化で人の往来が活発になり、さらには高齢化や野生動物のペット化などが進む中で、未知の感染症の出現や沈静化した感染症が再度流行したりしています。COVID-191やSARSなど新興感染症の多くが動物由来感染症なのです。前述のような社会の多様化を背景に動物由来感染症は問題視されているのです。
日本にどれくらいの動物由来感染症があるのか
世界では約300種類あるとも言われていますが、日本は特に種類が少なく数十種類程度と言われています。日本国内でも感染しないように注意する必要がありますが、海外では特に注意するべきでしょう。
主な動物由来感染症
日本国内・海外で発生している主な動物由来感染症を動物毎に一覧にしました。
下記に掲載していない動物であっても、感染症リスクが評価されていない場合や、動物の体に寄生するダニ・ノミを介した感染症リスクがありますので決して油断しないようにしましょう。
①ペット
種類 | 主な感染症 |
イヌ | パスツレラ病、皮膚糸状菌症、エキノコックス症、カプノサイトファーガ感染症、コリネバクテリウム・ウルセランス感染症、ブルセラ症、重症熱性血小板減少症候群、狂犬病*1 |
ネコ | 猫ひっかき病、トキソプラズマ症、回虫症、Q熱、パスツレラ症、カプノサイトファーガ感染症、コリネバクテリウム・ウルセランス症、皮膚糸状菌症、重症熱性血小板減少症候群、狂犬病*1 |
ネズミ | レプトスピラ症、鼠咬症、野兎病、皮膚糸状菌症 |
ウサギ | レプトスピラ症、鼠咬症、野兎病、皮膚糸状菌症 |
ハト | オウム病、クリプトコックス症 |
②野生動物
種類 | 主な感染症 |
爬虫類 | サルモネラ症 |
観賞魚 | サルモネラ症、非定型抗酸菌症 |
プレーリードッグ | 野兎病、ペスト*1 |
リス | 野兎病、ペスト*1 |
アライグマ | 狂犬病*1、アライグマ回虫症 |
コウモリ | 狂犬病*1、リッサウイルス感染症*1、ニパウイルス感染症*1、ヘンドラウイルス感染症*1 |
キツネ | エキノコックス症、狂犬病*1 |
サル | 細菌性赤痢、結核、Bウイルス病、エボラ出血熱*1、マールブルグ病*1 |
野鳥 | オウム病、クリプトコックス症、ウエストナイル熱*1 |
ネズミ | レプトスピラ症、鼠咬症、野兎病、腎症候性出血熱、ハンタウイルス肺症候群*1、ラッサ熱*1 |
③その他
種類 | 主な感染症 |
蚊 | ジカウイルス感染症、チクングニア熱、デング熱、ウエスト名いる熱 |
ダニ | ダニ媒介脳炎、日本紅斑熱、ツツガムシ病、重症熱性血小板減少症候群、クリミア・コンゴ出血熱*1 |
*1:日本で病原体が未だ、もしくは長期間発見されていない感染症
*2:日本では患者発生の報告がない感染症
参考:厚生労働省ホームページ
どのようにしてヒトに感染するのか?
動物から人間に感染することを伝播と言いますが、直接動物から人間に感染する「直接伝播」と動物と人間との間に何らかの媒介物が存在する「間接伝播」の大きく2パターンがあります。それぞれの具体例と動物由来感染症の例を一覧にしました。
①直接伝播
感染源である動物から直接人に感染することです。
具体例 | 動物由来感染症の例 |
噛まれる、引っ掛かれる | 狂犬病、カプノサイトファーガ感染症、パスツレラ症、鼠咬症 猫ひっかき病 |
糞便に触れる | トキソプラズマ症、回虫症、エキノコックス症、クリプトコックス症、サルモネラ症 |
飛沫、塵埃 | オウム病、コリネバクテリウム・ウルセランス感染症 |
その他 | 皮膚糸状菌症、ブルセラ症、ペスト |
②間接伝播
動物と人間との間に何らかの媒介物が存在して感染することです。さらに間接伝播は3パターンに分かれます。ここではベクター媒介・環境媒介について紹介します。
- ベクター媒介(ダニやノミなどが運んで人間に感染するもの)
- 環境媒介(水や土壌など周囲の環境を介して人間に感染するもの)
- 動物性食品媒介(動物性の食品が病原体で汚染されており人間に感染するもの)
ベクター媒介
ダニ | クリミア・コンゴ出血熱、ダニ媒介脳炎、日本紅斑熱、つつが虫病 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、ライム病、野兎病 |
蚊 | 日本脳炎、ウエストナイル熱、デング熱、チクングニア熱 ジカウイルス感染症 |
ノミ | ペスト |
ハエ | 腸管出血性大腸菌感染症 |
環境媒介
水 | クリプトスポリジウム症、レプトスピラ症 |
土壌 | 炭疽、破傷風 |
参考:厚生労働省ホームページ
まとめ
ここまで動物から人間に感染する恐れがある主な動物由来感染症とどのようにして感染するのかなどについて紹介してきました。家族の一員であるペットも野生動物もそれぞれ感染症のリスクがあることが分かりましたね。ペットとはいえ過度なスキンシップは控える、アウトドアに出かけた際に野生動物を見かけてもその体や排泄物に触れないようにしましょう。
可愛い動物たちですが、予期せぬ事態にならないよう上手に付き合っていきたいですね!